「高齢の親が都心に広い土地を持っているけど、相続税はいくらかかるんだろう?」と、相続について気にされている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、土地相続に関してこれだけは知っておきたい基礎知識から、駐車場経営をはじめ相続税対策に有効とされる土地活用の方法まで、まとめて紹介します。
そもそも相続税とは、親や配偶者、兄弟など被相続人の遺産を受け継ぐ際に、その価値(遺産総額)に対してかけられる税金です。
相続が発生するタイミングは、原則として「被相続人が亡くなった日」。
この日から3カ月以内であれば、相続放棄をすることも可能です。
相続税はすべての人(法定相続人)にかかるわけではありませんが、被相続人が都市部に広い土地を持っているなど遺産総額が高額だと、相続税も多額になることがあります。
ただし土地の相続は、そのまま引き継ぐよりも上手に活用することで相続税を減額させることも可能です。
土地活用で相続税対策を行うことも、ぜひ検討してみましょう。
土地の相続税を決める相続税評価額とは
相続税の評価方法は、土地とそれ以外の資産とでは異なります。
例えば、現金や株式などの相続税の評価額は「時価」で決まります。
1億円の現金を相続するなら、相続税の評価額も1億円になるわけです。
一方、土地の場合は、その土地の用途などによって評価額が異なります。
1億円で購入した土地が、相続税の評価額も1億円になるとは限りません。
簡単にいえば、「相続が発生したタイミングで売却したら、いくらで売れるか」が、土地の評価額になるわけです。
具体的な評価方法として、大きく「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。
路線価方式について
路線価方式とは、国税庁が毎年発表する「路線価」をもとに、土地の評価額を決める方式です。
主に都市部では、この方式によって相続税の評価額が算出されます。
基本的には、路線価に土地の面積をかけて求めますが、三角地や旗竿地のような土地の形が複雑な場合には、補正したうえで算出されます。
なお、この価格は実際の不動産売買取引時価と比べて7割くらいになることが多いようです。
倍率方式について
倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて求める方式です。
都市から離れた土地(農地や山林なども含む)など、路線価の示されていない地域では、この方式で求めるのが一般的です。
固定資産税評価額は、各自治体の税務課などで調べられます。
この価格に、国税庁が公表する「評価倍率表」に定められた評価倍率をかけて評価額を算出します。
この場合も、実際の不動産売買取引時価の7割くらいになることが多いようです。
相続税対策になる土地活用方法はあるの?
土地の相続税評価額は、その用途によっても異なり、活用次第では評価額を抑えることも可能です。
例えば、建物がある土地ならその建物を貸家にしたり、更地であれば貸家建付地にしたりすることで相続税評価額を下げることができます。
評価額が下がれば、課せられる相続税額も抑えられるのです。
また、その土地で収益をもたらすビジネスを始めるのも一手でしょう。
多額の相続税を支払っても、その土地を所有し続ける限り毎年固定資産税がかかります。
できることなら、収益が得られるような土地活用をし、固定資産税くらいは払えるよう稼ぎたいものです。
土地活用の典型的な例として、「アパート経営」や「マンション経営」があります。
ただ、これらの不動産投資は高額な建築費用が必要になりますから、相続税の支払いで手元資金がないという方にはハードルが高い方法でしょう。
もっと手軽に始める土地活用として、駐車場経営があります。
これなら初期投資費用を最小限に抑えられますし、更地ならすぐに収益性のあるビジネスとして始められます。
それに、やり方によっては相続税対策にも効果があるのです。
相続前に駐車場化しておくと相続税が安くなる
駐車場経営のメリットの一つが、「更地のままでもビジネスが始められること」が挙げられます。
砂利敷きの土地でも、ロープなどでスペースを区切れば始められますので、イニシャルコストを抑えられます。
また、土地を転用しやすいことも駐車場経営のメリット。
大きな建物がないので、省コストで容易に転用できます。
例えば、「アパート経営を始めたいけど、手元の資金が足りない」という方なら、駐車場経営で資金を稼ぎ、お金が貯まったら転用するといった方法も可能でしょう。
相続税の観点からすれば、相続前に駐車場にしておくと、相続税を安く抑えられることもあります。
一例として、アスファルトやコンクリートで整備した駐車場であれば、「相続税の小規模宅地等の特例」が適用されることもあり、適用されたら評価額が半分に減額されます。
例えば、何も活用しない土地の評価額が1億円だとした場合、アスファルト敷きの駐車場に転用すれば評価額は5,000万円に抑えられます(一定の条件がありますので、詳しくは後述します)。
仮に、親が持つ土地以外の資産が4,000万円、法定相続人は子1人の場合の相続税を計算してみましょう。
何も活用しない土地の場合
- 遺産総額:1億4,000万円(土地の評価額が1億円、それ以外の資産は4,000万円)
- 基礎控除額:3,600万円(3,000万円+600万円×1人)
よって、課税価格(相続税がかかる価格)は、
1億4,000万円-3,600万円=1億400万円
となります。
1億400万円の相続税率は40%(1億円を超え、2億円以下の税率)ですから、支払う相続税の額は、
1億400万円×0.4=4,160万円
4,160万円が相続税の支払額です。
駐車場化した土地の場合 ※1
- 遺産総額:9,000万円(土地の評価額が5,000万円、それ以外の資産は4,000万円)
- 基礎控除額:3,600万円(3,000万円+600万円×1人)
よって、課税価格は、
9,000万円-3,600万円=5,400万円
です。
5,400万円の相続税率は30%(5,000万円を超え、1億円以下の税率)ですから、支払う相続税の額は
相続税=5,400万円×0.3=1,620万円
1,620万円が相続税の支払額です。
このように駐車場化することで、相続税が2,540万円も安くなるのです。
※1 「相続税の小規模宅地等の特例」が適用される駐車場の場合
駐車場経営で相続税対策をするコツ
上でも注釈で示していますが、駐車場で「相続税の小規模宅地等の特例」が適用されるには、以下の条件が必要です。
- 土地面積が200m2以下であること
- アスファルトやコンクリート敷きであること
特例が受けられる「小規模宅地等」の土地面積は、200m2以下となっています。
200平米を超える場合は、適用されませんのでご注意ください。
また、特例の適用条件には「構築物がある」ことも必要です。駐車場の場合、アスファルトやコンクリート敷きにすることで構築物があるとみなされます。
砂利敷きでロープを張っただけ、止め石があるだけの駐車場は、特例に適用されませんので、舗装する必要があります。
なお、一般的にアスファルト舗装の工事費は、1㎡あたり約5,000円といわれます。
㎡
200㎡でも100万円ですから、減額される相続税と比べれば投資してもよい額でしょう。
まとめ
相続税は、さまざまな資産に対してかけられるものですが、このように評価額を変えられるのは不動産のみの特例でもあります。
現金をそのまま相続させるより、小規模宅地等の特例を利用できる駐車場にして相続税を抑えるという方法も一手でしょう。
なお、アスファルト敷きにするなど「構築物がある」とみなされることが特例を受ける条件です。
砂利敷きの青空駐車場では特例を受けられないため、支払う相続税は高いままになります。
相続税対策の一環で駐車場経営を検討されている方は、事前にしっかり準備や対策を取っておくことも大切なのです。
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